- 執筆方法と文体

2004/02/11/Wed.執筆方法と文体

鉛筆で文字を書く習慣がすっかりなくなってしまった T です。こんばんは。

昔々、ワープロという機会が出回り、それを使って小説を書く作家が誕生し始めた頃、「ワープロで文章を書くと文体が変わるのではないか」という議論があった。この命題は大いに物議を醸し出したのだが、あまりの利便性と生産性からワープロ、そしてパソコンの普及が爆発的に進み、ワープロ世代の作家が名声を獲得するようになると、この話題は下火になった。現在では「キーボードなんかでまともな文章が書けるわけがない」という主張は化石のような扱いをされている。誰もこの話をしなくなった。

「キーボードでまともな文章が書けない」という極論には賛成しかねるが、俺は「手書きとキーボードでは文体が変わる」という主張については、これは本当ではないかと思っている。

京極夏彦以降、雨後の筍のように増殖した、難読漢字を駆使した文章などは、やはり IM(かな漢字入力変換ソフト)の強力な変換機能による恩恵が大であろう。また、キーボード入力による生産性の向上が、一群の長編小説を可能にしたのは恐らく事実である。結果、そのような大長編を読ませるための文体というものが新たに誕生したと思うのは俺だけだろうか。

手書きからキーボードへ。開放された面もあるし、制約を受けた面もある。それだけのことなのだが。

一般人の俺がここで日記を書いているように、ネット上で読める文章の量は本当に増えた。睡眠前のささやかな読書欲を満たすくらいなら、わざわざ本屋に行かずとも事足りる。活字中毒者には良い時代だ。さすがに、一般書籍並の(代価を払っても良いと思えるくらいの)文章にはなかなか出会えないのだが、それでも色々と読んでいるうちに、昔のことを思い出したりしたのですよ。< 何歳だ、お前は。