- 日本の漫画を世界に紹介するなんて止めとけ

2007/02/03/Sat.日本の漫画を世界に紹介するなんて止めとけ

現在、漫画は週刊少年漫画誌を立ち読みする程度の T です。こんばんは。

漫画と麻生太郎外務大臣については、先日の日記にも書いたし、BBS では Retus氏に色々と教えてもらった。麻生閣下が、個人的に漫画やアニメを擁護したり称揚するのは好ましいことだと私は思っている。しかし。

家電やカメラなどの日本製品と並んで「ジャパン・ブランド」の一角を担うようになった日本の漫画やアニメ。政界一の漫画好きで知られる麻生太郎外相が音頭を取り、外務省の後押しでさらに世界に発信する取り組みが本格化している。

(Sankei WEB)

こういう話は過去に何度も出ているが、本当に止めた方が良い。江川達也などはよく反対している (国 = 官僚が売り出そうとした文化は衰退する、というのが理由のようである)。私が反対する理由は、江川のそれとは少し違う。

今は海外の「進んだ」オタク達だけが日本の漫画の価値を理解し、楽しんでいる。ここで重要なのは、オタク間には、ある程度に共通の物差しが成立していることである。さて、「外務省の後押しでさらに世界に発信」した結果、日本の漫画が海外の一般庶民に開陳されたとする。日本の漫画表現は世界一進んでいる。すなわち、「遅れている」一般庶民にはその神髄が理解できないであろう、と予測できる。また、一度門戸が開かれた以上、これまで海外ではあまり知られていなかった日本の作品も流通するようになる、あるいは海外のオタクが流通させようとするだろう。その中には、日本人以外には極めて理解に苦しむ作品、日本においてのみ倫理的に許容されている作品が大量に含まれると考えられる。それらの存在は、いずれ一般人にも知られるようになるだろう。

その結果、黒船が来る。

過去に柔道が世界に紹介された結果、「柔よく剛を制す」という柔道の神髄は全く理解されず、「体重別階級」「制限時間」「指導」「判定」といった、本来の柔道からすれば屈辱的な規制が加えられた。この点、さすがに相撲は賢明である。外国人に相撲は取らせても、外国で相撲を指導したりはしない。

それはともかく、柔道と同じ事態が漫画にも起きるのではないか。最近は、週刊少年漫画誌でも大幅に乳の自主規制が解かれ、私なんかは「くだらねえ」と思っているところだが、それが異常とまでは思っていない。売れるから、つまり読者が求めるからそうなっているだけのことである。無知を承知で書くが、萌え絵のような極端に身体パーツをデフォルメした絵柄に萌えるという行為は、歌麿の春画が売れるのと同じ現象であるように思う。日本人は、絵にそういったセクシャリティを感じる傾向がある。しかし文明開化のおり、このような絵は「野蛮」だとされ、日本の後進性を象徴するものだとされた。浮世絵自体は海外でも長く生き残ったが、春画の多くは焼かれた。

児童ポルノや残酷表現の摘発に躍起となっている先進諸国から見れば、日本における漫画のメインストリームといえる週刊少年漫画誌ですら、規制の対象になりそうな連載が多い。捕鯨のように、理不尽な反感を日本は獲得しそうである。

憂鬱だ。麻生閣下には熟考を期待したい。日本の漫画が世界に紹介されて一番不利益を被るのは、日本のオタクになりそうな気がする。お前ら、それで良いのか。