- 『伝染るんです。』吉田戦車

2007/11/23/Fri.『伝染るんです。』吉田戦車


文庫版全5巻。

第1巻には、『伝染るんです。』の名付け親である竹熊健太郎が、その経緯に関するエッセイを寄せている。

本書は不条理ギャグ漫画の嚆矢——などという解説も、もはや陳腐以下のものだなあ。久し振りに読んでみての感想は、「やっぱり面白い」の一言に尽きる。過去の漫画を読むときに湧き上がる「懐かしい面白さ」ではなく、今読んでも新鮮に面白い。すぐに古くなるギャグ漫画としては異例のことだ。

『伝染るんです。』の連載は 1989〜1994年。もう一回り以上も昔のことである。当時の私は高校生だ。「私」という条件を除けば、20世紀末の高校生が読んでも、21世紀のオッサンが読んでも面白いことになる。センスや感覚だけでは、なかなかこうはならない。ではそこに何らかの構造があるんじゃないか、という話になるのだが、『伝染るんです。』はそのような解体を拒否する。というか、最初から解体されている。

10年後に読んでも、まだ面白いのだろうか。楽しみである。