- 『デセプション・ポイント』ダン・ブラウン

2006/11/14/Tue.『デセプション・ポイント』ダン・ブラウン

舞台はアメリカ、大統領選挙の最中である。大統領候補であるセクストン上院議員の娘・レイチェルは、父と折り合いが悪い。しかも仕事は、現職大統領、つまり父の敵陣営が読むための情報局レポートを要約すること。彼女は国家偵察局 (NRO) 局員なのだ。微妙な立場である。

セクストン議員は、選挙戦術として、現職大統領による NASA の支援を弾劾していた。NASA は、その豊富な資金 (= 税金) の割にはほとんど成果がなく、むしろ失態ばかりである、というのがその主張だ。そんなとき、NASA が地球外生命体の存在を証明する証拠を発見した、という極秘情報が入る。大統領に説得され、レイチェルは NASA の極秘プロジェクトに参加する。だが、その裏には陰謀があった。それに気付き始めたレイチェルと外部の科学者は、何者とも知れない黒幕から襲撃を受ける。果たして、NASA の証拠は本物なのか。陰謀を画策しているのは誰か。大統領側か、対立陣営側か。

短い断章で多数の登場人物が目まぐるしく動く、というダン・ブラウンの手法には段々と慣れてきた。本作でも、作中で流れる時間は驚くほど短い。今回は印象的な脇役が多かった。NASA、地球外生命体という、リアリティが危なっかしい題材を取り上げているが、人物が生き生きとしているので、大して気にならない。ただ、やはりあまりにもハリウッド的な展開に過ぎるので、後半からはほとんど筋が読めてしまう。

そこがもったいない、小説としては。