- 将棋(一)棋理と棋風

2015/07/08/Wed.将棋(一)棋理と棋風

三ヶ月ほど前から将棋を始め、最近ようやくハム将棋に勝てるようになった。

将棋は二人零和有限確定完全情報ゲームなので、最善手を数学的に求めることができる。これを棋理という。一方で将棋はその複雑さゆえ、完全解析は計算機を使ってすら現時点では容易でなく、実戦では臨床的な経験智に頼る部分が大きい。これは棋風と関係する。将棋に勝利するための最適なアルゴリズムが棋理ならば、そこに棋風など存在し得ないはずである。しかし現実には両者が並存しており、将棋の奥深さを示すとともに大きな魅力となっている。

多くの人にとって将棋は、ゲーム理論的な「ゲーム」である以前に抜き差しならぬ「勝負」に他ならない。だが個人的には、棋理の探求に深い関心がある。また実際的な問題として、三十歳を超えて将棋を始めるとなると、指し手を一々論理的に咀嚼したほうが棋力の向上に繋がるという実感もある。駒を繰り返し並べて定跡手順を感覚的に把握するといった類の能力を、既に私は失っている。

これから、将棋というゲームについての私的な理解を記述する。コンピュータ将棋プログラム Bonanza の開発は、棋力が棋理の構築には必須でないことを証明した心強い一例である。臆せず、自分が考えたことを書いていこうと思う。