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2013/04/16/Tue.Save Time

米国に来て二週間が過ぎた。

渡米二日目より実験を始め、三つのプロジェクトを進めている。一つはラボの重要なテーマで、これは既にかなりのデータが存在する。一つは野心的なもの、もう一つは私が propose したもので、これらは海のものとも山のものともわからない。いずれも幹細胞、初代培養、動物を使うので、私のスケジュールは彼らに支配されている。

生活の立ち上げや様々な手続きは実験の合間にこなした。最初の数日は灯のない部屋で CASIOPEA を聴きながら黙々とソリティアに興じていたが、先週末にルームライトと自転車を購入し、今日はインターネットが開通して、段々と人間らしくなってきた。注文している家具が届けば一段落するので、今少しの辛抱である。

時差ボケ jet lag には最も苦しめられた。三時に目が醒め、昼間は眠くて仕方がないという状態が十日ほど続いた。高緯度かつ夏時間の Minnesota では六時から二十時まで陽が高く、日本とは異なる時間感覚にも体内時計を惑乱される。一回の食事量が違うから、腹時計も参考にならない。ようやくリズムが掴めてきたのはこの二、三日のことである。

私が一番恐れているのは、この地の寒冷な気候である。四月も半ばになりながら、なお数センチの降雪があるのには閉口した。もちろん真冬ともなればこんなものではない。こんなものでなかったらどんなものか。温暖な地域で生まれ育った私には想像できない。とにかく想像を絶するのであろうという想像がさらなる恐怖を呼ぶ。十月には初雪が降ると聞く。それまでに冬支度をせねばならないらしい。しかし私にとって冬支度とは、走馬灯や槍玉と同じく文字でのみ知る存在であり、その実態は全くつまびらかではない。

——以上は僅々二週間の経験である。二週間は、一年=五十週間の四パーセント、留学期間三年=百五十週間の一パーセント強でもある。

ところで、先日の日記で「郷には入れば郷に従え」と書いた。せっかく米国に来たのだから、できるだけ米国式で生活しようと思っている……のだが、我家に土足で踏み込むことだけは実行できていない。どうにも敷居が高い。米国の部屋には敷居がないのに不思議なことである。