- 旧日本軍

2013/03/10/Sun.旧日本軍

ドルには弗の字を当てる。dollarではなく字面$が似ているからである。大変面白いが、類似の例を他に知らない。

メートルには米の字を当てるが、米国で広く使われるのはヤード系である。翻って科学では、ヤード、ポンド、華氏などを用いない。英米の研究者にはストレスだろうが、日本人が英語を強いられる苦痛に比べれば大したことではない。

話を変える。

慎重な記述が続く大岡昇平『レイテ戦記』にも旧日本軍という言葉が現れる。これが奇妙な語であることを指摘したのは誰だったか。発言者は忘れたが内容は覚えているので下に要約する。

旧-日本軍と解釈するとどうなるか。日本国憲法は第九条で「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」と謳っている。自衛隊も軍ではないとされる。新軍がないのに旧軍というのはおかしい。そもそも日本軍はかつて一度しか存在したことがないのだから、新も旧もない。そこで旧日本-軍と考えてみる。これは大日本帝国と日本国が断絶していることを意味する。しかし昭和天皇が天皇であり続けた一事を見ても、この仮定はあまりにも無理がある。いずれにせよ辻褄が合わない。

以下は私の説である。自衛隊は英語で Japan Self-Defense Forces という。Force は軍である。自衛隊の創設には米国が深く関与している。折衝の席では、新設される new Forces と解体された old/former Forces の比較が何度もなされただろう。すなわち旧日本軍は訳語ではないのか。天皇制という言葉もコミンテルンの用語の翻訳である。旧軍もその可能性は充分にあると思う。