- あだち充システム

2012/11/06/Tue.あだち充システム

手塚治虫の漫画群におけるスターシステムは広く知られている。同じ外見のキャラクターが、様々な作品に様々な役割で登場する仕掛けである。キャラクターを俳優に、漫画を映画に置き換えるとわかりやすい。

藤子・F・不二雄の漫画群は、スターシステムとは反対の構造で成立している。すなわち、様々な作品の同じ役割を別のキャラクターが演じる。ジャイアンとブタゴリラは別人だが、各作品内の位置付けは等しい。これをロールシステムと呼ぼう。同一パターンの作品を異なるキャラクターが演じるシステムである。これを極端にしたのが『水戸黄門』だといえる。

さて、あだち充である。彼の作品群に採用されているのは、スターシステムのようでもあるし、ロールシステムのようでもある。今のところ、あだち充システムとでも呼ぶ他ない。

ところで、『タッチ』における浅倉南の上杉兄弟に対する好意の変遷は、「顔が同じだったらそれで良いのか」と悪意的に読むこともできる。確かに達也は南を甲子園に連れて行ったが、明青学園が甲子園に出場できたのはナイン全ての活躍があったからである。「甲子園に連れて行って」が本当に南の夢であるのなら、和也亡き後、彼女はその夢を他の野球部員に託すこともできた。というより、それが自然であった。なぜなら、達也は野球部員ではなかったからである。「*ただしイケメンに限る」をこれほど露骨に——達也と和也は一卵性双生児だが性格は似ていない——表現した漫画も珍しい。