- 絵画教室三十五回目

2012/10/06/Sat.絵画教室三十五回目

絵画教室三十五回目。五枚目の水彩画の八回目。モチーフは寿司(の写真)。

寿司下駄に色を塗る。滲みを利用して、木目を上手く描くことができた。

手拭いにも筆を入れる。白地に紺色の水玉が整然と並んでいるのだが、手拭いは折り畳まれているから、実際に目に映る水玉は楕円で、大小も様々で、その列も波打っている——ように見える。それでもなお我々は、「同一の正円が格子状に並んでいる」ことを理解することができる。

絵を描くというか、形を取る上で最も難しいのは、幾何学的構造を精確に再現することのように思う。

人間の眼は幾何学的構成を高感度で検出する。ジャガイモのような凸凹した形状が多少変形していても我々は気付くことができない、気付いたとしてもそれほど気にならない。しかし、円、直線、平行、直交といった幾何学的性質(例えば画布に再現されるのは直線そのものではなく、その直線性である)の僅かな歪みはすぐにそれとわかるし、そのときに抱く気持ちの悪さもまた大きい。

人間の眼が幾何学的構成を高感度で検出するのはなぜか、という問いは恐らく間違っている。人間の眼が高感度で検出する構成が幾何学(特にユークリッド幾何学)の対象として選ばれた、というのが正解だろう。

幾何学的構成を生物が検出するときに重要だと思えるのは、その時間性である。直線は二点間を結ぶ最短の経路であり、円は一点からの信号が単位時間あたりに伝播する最大の範囲である。このような性質は、ニューロンが発火する時間差や、ある時間内に発火するニューロンの数といった事象に置換することができる。我々は、幾何学的性質を時間的に把握しているのではないだろうか——。無論、妄想である。

夜は居酒屋で晩餐。

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