- 音楽のこと

2010/11/13/Sat.音楽のこと

音楽にはあまり関心がなく、熱心に聴くこともほとんどない。観賞している自分の内的時間を制御できないことが大きな理由である。音楽はその性質として絶対的な時間軸を有しており、鑑賞者はそれに従うしかない。これが不愉快である。

本なら速読も精読も熟読も味読もできる。白眉となる場面で頁を閉じ、目を瞑ってその光景を妄想したり、あるいはそこで展開されている理論に思考を巡らせたり——。これが音楽ではできない。勝手に流れて行き、勝手に終わる。こちらの都合は一切考慮されない。わんこそばのようなものである。口の中に蕎麦が残っている状態で、次の椀を足される。食べたこともないのに断言するが、こんなものが美味いわけがない。

同様の理由で、映像作品も好んで観ることはない。同じ視覚作品でも、漫画やゲームは自分で時間をコントロールできるので大変面白い(FF や MGS で多用されるようなムービーをゲーマーが好まないのは、制御可能な世界に制御不可能な時間が挿入される違和感のためではないか)。

それでも、たまには音楽を聴くこともある。

青春時代——日本で一番 CD が売れていた頃——は、The Beatles にどっぷりとハマっていたので、人生の血肉として吸収した音楽の中に邦楽は含まれていない。そのくせ洋楽好きというわけでもなく、The Beatles 以外はその周辺を少し聴き齧った程度なので、いわゆる pop music についての知識や記憶は何もない。

結局、心の中に残っているのは、ゲーム音楽と子供の頃に観ていたアニメの主題歌が大半である。現在進行形となると、もうゲーム音楽しかない。

ゲーム音楽には幾つかの特徴がある。基本的に BGM であるから、short-repeatable であり endless である。ほぼ全てが instrumental であるから ideologisch ではあり得ない。Impressive ではあるが絶対に noisy ではない。これらの性質は妄想や思索、すなわち自分の観賞態度と合致する。

だから実は、「ゲーム」音楽であることに必然性はない。ゲーム音楽を愛しているのは、ゲームを愛しているからではないのである。事実、クソゲーやプレイしていないゲームの音楽 CD を購入することもある。

MH3(未プレイ)の soundtrack を聴きながら、以上のようなことを考えた。