- 他人任せは怠慢ではなく我慢

2010/08/07/Sat.他人任せは怠慢ではなく我慢

東海の研究員君が来京したので、昨夜はテクニシャン氏、研究員嬢と一緒に宴を催した。

研究員君の二本目の論文は、投稿寸前まで進捗したとのことだった。業績の数は死活問題であるから、実験と論文書きの時間配分をどうするかは、極めて重要な問題である。一ついえるのは、実験時間を劇的に短縮するのは難しいが、論文の執筆時間は慣れることで相当に圧縮できるということである。

独力かつある程度の期間で論文を書き上げる力を身に付けるには、実際に書いて経験を積むより他に方法はない。

自分の場合、一本目の論文ではボスから懇切な指導を受けたが、二本目三本目は「手前で出せ」という方針で細かい指示はなかった。もちろんチェックは受けるが、「こういうことを/こういうふうに書け」と具体的に言われた記憶はあまりない。Letter や response の作成、submission の手続きや publisher との連絡、authorship agreement を集めるための根回しなどを任されもした。

これはボスの怠慢ではなく我慢である。何度も reject を喰らうのを見ながら、よく口を出さなかったものだと思う。なかなかできることではない。これらを通じて、publish の技術だけでなく、他人に任せることについても学べたのは大きな収穫だった。

例えばテクニシャン嬢たちに対して、実験を失敗しないようにと口を挟むのは簡単である。一方、失敗するまでは黙って見ているというのは難しい。そこを我慢してみることでわかるのだが、しかし実際の実験は、思ったほど失敗しない。仮に成功率が低いなら、それは系を構築した自分に責任がある。そう認識すべきである。

この、いささかマゾヒスティックな我慢と認識を通じてのみ、真の信頼が生まれ得る。一般的な意味で「任せる」ことができるようになるのは、その後であろう。

読書日記

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