- Difficult to Survive

2010/08/05/Thu.Difficult to Survive

先日、小児科 K 先生の論文が accept された。Second author である自分としても感慨深い。

K 先生が我々と研究を始めたのはいつだったか。彼が日記に登場するのは二〇〇六年五月からである。当時大学院生だった K 先生に、細胞培養を始めとする様々の手技を教え、一緒に実験を design し、data を見ては discussion を繰り返したことを思い出す。

彼の実験結果は、ほぼ仮説通りであった。そういう意味では「堅い」project だったが、それでも論文になるまでに随分と時間がかかった。これには(非科学的な事柄も含めて)色々の理由がある。具体的な事由はどうでも良い。ここで述べたいのは、程度の差こそあれ、どんな研究でもそれは同じだろうということである。眼前の実験だけが研究者の苦労ではない。

生き残ることが、そもそも難しい。

最近は HN 先生の研究を手伝っている。心筋細胞での解析をまとめた彼の投稿論文が、ES 細胞での実験を追加せよという comment とともに返ってきたからである。

かつて自分が ES 細胞で行った研究は、力不足もあって行き詰まり、競争が激しいこともあって、それほど良い仕事にはならなかった。しかし今回、再登板の機会を与えられ、構築した実験系が活用されるに至った。これは、随分 とlucky なことでもあった。

あるテーマに対して、心筋細胞と ES 細胞の系がともに動いている lab はどれほどあるのだろうか。多くはないだろう。そのことを考えると、reviewer の要求はかなり高度であるように思う。その上、再投稿までの時間が短い(六十日)のだから、一般的には相当厳しいのではないか。

評価の高い journal に論文を通そうとすれば、この種の、本質的には scientific な能力と無関係な困難を克服することが求められる。眼前の実験だけが研究者の苦労ではない。

生き残ることは、なかなか難しい。