- セル・ブリーダー推奨

2005/08/13/Sat.セル・ブリーダー推奨

付け焼き刃から始めている T です。こんばんは。

研究日記

大学に行き、これから飼うことになる細胞の培地交換・継代のレクチャーを受ける。何ということはない操作だが、モタモタとしてしまう。慣れてないから仕方ない、というしかない。彼らにとっては線虫の植え継ぎが難しいかもしれない。そういうレベルの問題である。ヒマを見付けて練習するしかないわな。

観察に限れば、やはり培養細胞よりも線虫の方が面白い。細胞と個体を単純に比較はできないが、こと線虫に限ればそうでもない。そもそも、線虫の個体観察が細胞レベルなのである。培養細胞も線虫も、同じような顕微鏡、同じくらいの倍率で観察する。観察の勘所というか、そういう面での不安はない。これもヒマを見付けて観察するしかないな。「顔」を覚えないことには始まらない。

細胞培養の課題

以下は初学者の感想である。

細胞培養はまだまだ発展途上のシステムである。細胞を培養するには、多くの場合、何らかの血清を培地として用いる。血清には様々な種類がある。つまり、生物学を行う上で最も基本となるところの「飼育条件」がいまだに定まっていない(培養細胞を生物と呼ぶべきかどうかについては棚上げする)。血清の何が問題なのかというと、その中に何が入っているのかわからないのである。

これらの事実を知識としては知っていたが、いざ自分が細胞を飼う、血清を注文するとなると、これは非常にヘンな感覚である。例えば同じ細胞を培養するにしても、分化しやすい(しにくい)血清があるという。同じ銘柄の血清であっても、Lot No. によって微妙に違うこともあるらしい。そういうことが、経験上知られている。理由は判然としない。血清の成分が完璧にわからないから。

ES 細胞は、さらにそのあたりが曖昧になる。分化機構の研究とは、今のところそのようなパラダイムで行われている。物理や化学の人から見れば、砂上の楼閣かもしれない。先生は、「ES 細胞の分化研究は臨床報告みたいなもの」という。こうしたら、ああなった。そういう報告に意味があるという、そんな段階なのである。

細胞培養の歴史を簡単に調べてみた。初めて組織培養が行われたのが 1885年、細胞レベルでの生命現象が報告されたのが 1907年、合成培地が開発されたのが 1960年だという。以前に書いた分子生物学の爆発的発展に比べ、ゆるやかな歩みと言わざるを得ない。それほど複雑であり、未知の事柄が多い、ということでもある。やるべきことは山とある。