- 現実問題

2004/10/16/Sat.現実問題

やっぱり足の裏が臭い T です。こんばんは。

研究日記

午前中はプログレスレポート。F氏が、PCR で塩基置換を導入したベクターを作っているのだが、「変異ベクターが取れない」と悩んでいた。プライマーで塩基置換を挿入する場合、理論的には野生型と変異型が 1: 1 の割合で現れるはずなのだが、なぜか野生型の方が圧倒的に多くなる。俺も変異ベクターをいくつか作ったが、経験的に野生型:変異型が 5: 1、ヒドいときには 10: 1 くらいの比率になる。プライマーやテンプレートの量をいじって、変異型の出現頻度を上げることはできるけれど、それでようやく五分五分といったところか。

F氏の場合、シーケンスしたサンプル数が少なかっただけなので、トライアルを繰り返せば、必ず変異型ベクターを引き当てることはできるはずである。面倒なのはわかるが、数をこなせば成功する実験というのは、考えようによっては楽なものだ。

それはともかく、どうして理論的には 1: 1 の比になるはずのものが、5: 1 や 10: 1 になるのかというのが問題である。野生型の方が多いというのは、感覚的には納得できるが、なぜそうなるのかと問われても答えに詰まる。やや秘教めいた書き方になるが、いくら PCR が in vitro の系であるにせよ、それが生体内での反応を模している以上、そこには常に生命の神秘が宿る素地がある。まあ、「生命の神秘」なんて言葉は、何も説明していないのに等しいのだけれど。

重要なのは、そういったワケのわからない現象が実際に起こるということであって、現実に仕事をするからには、それらに対処していかなければならない。こういった経験知の多くは、論文にも教科書にも書かれることはない。自分が直面して、初めて実感できるものである。あり得ない(はずの)「事実」にブチ当たったとき、自分はどうすべきか。これは全ての仕事における永遠のテーマではないかと思う。

酒宴日記

体調もほぼ全快。久し振りに美味しいものが食べたくなったので、ヒゲマン氏を誘って居酒屋へ。今夜は新しい店にチャレンジしたのだが、これが大当たり。落ち着いた雰囲気、旨くて安い料理、渥美清似で愛嬌のある主人、そして何よりも可愛い店員さん……、全てが完璧だった。一人でも飲みに行けそうな店だったので、新たな行きつけになりそうな予感。ごちそうさまでした。