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2003/09/07/Sun.es

レンタルビデオで「es」というドイツ映画を見た。実際にあった心理学の実験を題材にしたとかで、リアルな人間描写が結構怖い。

問題の実験というのは、一般の人間に刑務所のシミュレーションをしてもらうというもので、被験者は看守役と囚人役に別れ、刑務所と同じ施設で実際の看守や囚人と同様の生活を送る。ほとんどの被験者は金をもらうためと気楽に考えて志願してきた人ばかりで、最初のうちは実験と割り切って、看守も囚人もそれなりに和やかに刑務所生活を送るのだが、そのうち段々と本気になってくる。

看守役は真剣に囚人達を管理・支配しようとし、様々な威嚇を駆使して刑務所の秩序を保とうとする。一方、囚人達は最初は反発するのだが(看守役と囚人役では当然ながら待遇が違う。しかし報酬は同額)そのうちに本気で看守を恐れるようになり、屈辱的な仕打ちにも甘んじるようになる。

実際、これはただの実験で「ごっこ」なのだが、誰もがそれを忘れ、状況はどんどんエスカレートしていく。精神に異常を来す者が出始め、最後には死人まで出る。でも誰もやめようとは言い出さない。これが怖い。

みんなでやめたらええやん、というのは当然の意見なのだが、あの状況では言えないよなあ、と思わせるだけのリアルさが「es」にはあった。加えて、演じているのが皆ドイツ人というのが説得力がある。

真面目、秩序。こういう言葉はやはりドイツ人がしっくりくる。悲劇は起きるが、でもそれは皆が真面目に(クソ真面目に)秩序を保とうとするがゆえに起きるわけだ。そこが怖いことなのだが。日本人も多分にこういう性質を持っているので、この種の怖さを実感できる。これがイタリア人だったらこうはならないだろうなあ。

(注: ここで述べられているドイツ人、イタリア人のイメージは俺の個人的なものである。ちなみに、俺にはドイツ人にもイタリア人にも知人はいない)