- Diary 2002/12

2002/12/21/Sat.

今日は K先生の還暦祝いということでホテルでパーティ。H女史をはじめ、皆さんお疲れ様でした。何にも手伝わんでスンマセン。

さて、パーティが終わって荷物を取りにラボに戻ってきて、今年最後の更新。今日の夜に実家の方へと帰ってタイ行きの準備を始め、24日には日本を発つ予定であります。なにせ 40人からのキャンプ準備(しかも外国で 2週間)となると相当大変。帰国は 1月 8日だった、かな。

そういうわけで、皆さん、よいお年を。来年もよろしくお願いします。

2002/12/18/Wed.

学会のことを書くのもダレてきたなあ。

さて、3日目のポスター発表も終わり、皆で飯に行くことになった。発表者の場所は線虫関係の場所におおよそ集まっていたので、ラボメンバーがその辺りに続々と集まってくる。だが、そこで K先生に拉致られている B氏を発見! 嫌な予感が全員の頭上にたれ込めたことだろうが、ここで急に姿を消してしまうのも不自然だ。どうすべえ、と逡巡しているうちに「みんなで晩飯にしよう」と K先生。

仕方なくぞろぞろと歩き出したが、何を考えているのか、K先生は駅まで寒風吹きすさぶ屋外をどんどんと進んでいく。寒い(ちなみに、駅まではほぼビルディングの中を通って行くことができ、当然のことながら寒さに凍える必要などない)。

なすすべもなく、えらく上機嫌なK先生の話にひたすら相槌をうち続ける俺や B氏に、数歩後ろを歩いていた女性陣(Dr. T、H女史、R女史)が「何考えてるのよ」とのお叱りの言葉。この人達、上っ面はコマンタレブーってな感じでにこにこしているが、実は不満垂れブー。女の人って怖いなあ。

この日は金曜日で人手が多く、どこの店もいっぱい。K先生はどんどん駅から離れていこうとするし、皆の怒りは限界寸前。地獄じゃあ地獄じゃあ。

ようやく飲み屋ひしめくビルに入り、エレベーターに乗り込むが、降りようとしたフロアでドアが開いた瞬間、すでに目の前は黒山の人だかり。こらアカンわ。というわけで別のフロアにも行ったが、ここも同じ状況。もうどうしようもないので、そこで順番待ちにすることにした。狭い待合いにあり得ぬくらいの人、人、人。疲れているうえに、寒い中をさんざん歩かされて俺はぐったりとしていた。が、ふと気付くと K先生と B氏がいねえ。どういうこっちゃ。どうやら一言もなく K先生は去っていったらしい(B氏は K先生にまたしても拉致られた模様)。

「I can't believe」

R女史の怒りが炸裂。惰性で順番を待ち、店に入ったが、B氏が帰還し、Oh!氏が来るに至って、楽しい飲み会ができたことは幸せであった。ホンマどうなるかと思ったわ。

明くる 14日、ようやく俺の発表の日だが、最終日とあって、すでに帰ってしまった人も多いようで、聞きに来てくれた人はほんの数人。ヒマだあ。

まあ、最終日はどっぷり疲れて新幹線に乗り込んだ。横浜で買った駅弁「しうまい弁当」の中身がすごく、半分がチャーハンで残りが全部シューマイという、とんでもなくアバウトであったことが一番のトピックか。あと、全日程通じて、やたらと教官に間違われたのはお約束。

2002/12/17/Tue.

ようやくのことで俺は旅館にたどり着いた。外見は一見して普通の民家風、中身はやっぱり普通の家の玄関を少し広くしたような感じだった。誰もいない。「すみません」と案内を乞うが誰も出てこない。「すみません!」やや声を大きくしてみたがやはり梨の礫(つぶて)であった。「すみません!(怒)」と怒鳴ってやったらようやく台所からオッサンが出てきた。

部屋に案内されたが、ごくごく普通の家の個室。俺は予約をするのが遅かったので、無意味にツインの部屋だったのだが、なかなか広々としていて(当たり前だ)良い感じだ。今年すでに行った二つの学会はともに名古屋で同じホテルを利用したのだが、まあ、その狭さとは隔世の感よ。

さて、ゆっくり寝て 2日目(12日)はあまり面白い話がないので省略する。

明くる 13日、今日から俺のポスターを展示しなければならないので早めに行くが、ホテルから最寄りの駅まで結構歩き、さらには横浜で下車して会場まで歩いていくということをしていたため、少し遅れてしまった。ちなみに会場は(会場の建物の中が、ですぞ)めちゃめちゃ広い。何せ 1,600 を越えるポスター(1枚 = 1辺 150 cm の正方形)を展示し、おまけにたくさんの企業ブースまであるのだから当然だが。K先生が「自転車がほしい」と言っていたが、実は俺、会場内ではなくロビーでのことだが、自転車を押して歩いているオッサンを見たのだ。勿論、名札を張っていたので学会参加者であることは間違いない。

俺と A氏を除き、ラボのメンバー(Dr. T 含む)は皆今日が発表であった。規定の時間が終わり、では晩飯を食いに行こうということになった。A社に就職された Oh!氏も来られるとのこと。これは楽しみだと思っていたのだが、それが一転、暗雲立ちこめることになろうとは誰も予測しなかったのであった。

2002/12/16/Mon.

学会から帰ってきて久しぶりの更新。これまでのように学会スペシャルでも書こうか。

出発の当日、徹夜で新幹線に。A氏、B氏、ヒゲマン氏と共に乗り込んだが、全員徹夜。アホですなあ。ヒゲマン氏と喫煙車両へ。いきなり缶ビール 2本を注文するヒゲマン氏。さすがあ。横浜に着き、最寄りの駅で下車して会場まで歩いていくのだが、非常に遠い。しかも徹夜明けで皆ふらふらしておる。クロークに荷物を預けた後、昼飯にしようということになったが、せっかく横浜まで着たのにファーストフードで済ますという体たらく。

さて、学会のことなど書いてもつまらぬから、話をすっ飛ばして旅館のことを書く。俺が予約した宿は横浜駅から各駅で三つ離れた戸塚にあるのだが、地図を頼りに探せど、それらしい建物が見あたらぬ。何やら裏道に紛れ込んだらしく、どんどん辺りは薄暗くなるし人気も絶えてくる。困った。

と、そのとき、横道から小学校低学年くらいの女の子が現れた。道を聞くチャンス。さっそく声をかけようとしたが、微妙に距離が離れていたので早足で近付くことに。すると、足音に気付いた女の子が振り返り、俺の顔を一瞬だがまじまじと見たかと思うと、小走りで距離をとる。

むむ、見知らぬ人には気を付けよという親御さんの教えか。かといって俺も道に迷って困っているし、相変わらず付近に人の気配はない。俺はなおもスピードを上げて女の子に近付こうとした。

すると女の子は全力で逃げてしまった。

呆然と立ちすくむ俺の目に、辺りに立てまくられている(本当に壁のように延々と続いていた)看板が目に入った。そこには、

「痴漢出没注意! 気を付けよう 甘い言葉と 暗い道」

なんと、俺は痴漢と間違われていたのだ。ししし失敬な! 俺は実験でアミノ酸の置換はやったことがあるが、網野さんの痴漢はやったことはないぞ。うーむ。そんなに俺の風貌が怪しかったか。と反省しているうちに、女の子はすぐそこの家に入ってしまった。おそらく自分の家なのだろう。声が聞こえてきた。

娘「ただいまー」
母「はいはい、おかえり」
母「お母さん、あのねー、すぐそこにオジサンがいてー

ヤバい。マジで痴漢に間違われているぞ。俺はとりあえず通りから見えないように、慌てて更に細い道へと去っていった。いつになれば旅館に着くのか。

2002/12/10/Tue.

明日から土曜日まで学会で横浜。というわけで次回の更新は月曜日の予定。

昨日書くのを忘れたが、B氏と昼飯を食いに行った先で、ノーベル化学賞を受賞した田中さんの講演の様子を伝えるニュースを見た。田中さんは英語でスピーチしていたが、画面の下にはテロップで翻訳してあった。それによると、どうも田中さんは金属粉末を間違えてグリセリンに溶かしてしまったらしい。しかし、英語に堪能な我ら 2人は、テロップには書かれていないが、田中さんのスピーチから更なる情報をキャッチ。

「instead of acetone」

確かに田中さんはそう言った。ホンマかよ、と思って突っ込もうとしたら、「アセトンとグリセリン、間違えるか、普通」と一瞬早く B氏に先を越され、俺は後塵を拝してしまった。確かになあ。アセトンは揮発性の有機溶媒だし、グリセリンってでろんでろんしてるしなあ。例え間違えたとしても、溶かしてしまうまで気付かないことはないと思うがなあ。やっぱり、ノーベル賞ってこういう尋常ならざる幸運も必要なのかもね。

ところで、その田中さんの受賞を批判しているベルギーの大学教授がいるらしい。そいつの言い分では「田中の技術は最初まったく使われなかった。ドイツの科学者によって実用的なレベルに達した。だから田中の化学賞を取り消し、ドイツの研究者に贈るべきだ」というのだ。Instead of Tanaka というわけね。確かに、田中さんの研究だけが全てではないだろう、ドイツの研究者も優秀だったに違いない。

でもベルギーのオッサン、お前は何をしたわけ?

関係ないのにごちゃごちゃ口出すんじゃねえよ。見苦しい。日本人だと思ってなめてんのか? 可哀相な田中さん。早く彼に研究させてあげようぜ。

2002/12/09/Mon.

今週は「ガイアの夜明け」を見逃してしまった。無念。

明後日から学会で、皆ポスター作りにいそしんでおる。かくいう俺もその一人で、ずっとパソコンの前でフィギュアの作製。ラボに人は来ているのだが、学会に行く人は同じようにパソコンの前に釘付けなので、やけに研究室は静か。自分も実験していないので働いた気がしないのだが、ふと気が付くと肩が異常なほど凝っていて、視線を移動するだけで目の奥が痛んだりもする。

今週は学会で終わり、来週の実験で新しい変異タンパク質の性質を調べれば、なんともう年末ではないか。一度ここにも書いたが、俺は年末年始をタイで過ごす。24日には日本を飛び立つのだ。時間がねえ。なんとか来週に結果を出して、心おきなく税関を通り抜けたいものよ。

2002/12/07/Sat.

今日はシーケンス&学会前ということで久々の土曜出勤。カレンダーを見れば今年も本当にあとわずか。無事に年越しができるのだろうか。

シーケンスの結果は上々。これでベクターも正式にゲット。今期 12勝目であります。

学会のポスターを作っているのだが、昨日、かなり大幅な方針転換があったものの、過去の遺産を最大限に利用して何とか形作る。K先生の手直しも思ったより少なく、ちょっと肩すかしを食らった感も。なにより、最近のK先生はやけに機嫌がよい(ように俺の目には映る)。何かの前触れでなければよいが。

実験は順調(同じことしかしていないので当然ではあるが)だし、そこそこ早い時間に帰宅なんぞして平和な日々を送っている。しかし、研究室に入ってから、このような穏やかな日々は初めてなので何かとまどいを覚える昨今でありましたとさ。いいんかな、これで。

2002/12/06/Fri.

最近、3回に 1回の割合で食っている飯屋M の持ち帰り弁当(コールサイン: M弁)だが、どうもこれが怪しい。4日前にはヒゲマン氏が「食べ切れない」とぼやいて残したかと思うと、翌日にはダウンして「二度とアレは食わない」と宣言し、やはり 3日前に M弁を食った B氏も翌日から来なくなり、以来、今日に至るまで音信不通である。

一体どうしたというのだろうか。今夜も M弁を食おうとして H女史を誘ったところ、ふるふるふると大きく何度も首を横に振られて断られた。悪い予感でもするのだろう。現在、M弁愛好家で生き残っているのは俺と A氏だけである。ここ数回、何度か Y氏も一緒に食べたが、M弁を食べ慣れていない氏の体調が心配である。

2002/12/05/Thu.

また新たなベクターができた。喜ばしいことだ。明日シーケンスしたら、とりあえずベクターは終了。タンパク発現させるのは学会終わってからかなあ。ま、もう条件は決まっているから速いわな。ベクターのデザインからオーバーレイまで、全部で実質 10日もかからんのと違う?

でも、最初の結果が出るまで半年かかったのもまた事実。ということは、

研究効率 = 正味の研究日数 (10 days) / 半年 (200 days) = 0.05

こういうふうになりますな。それにしても 5% か。低い。つまり残りの 95% は試行錯誤という勘定に。まさに牛歩戦術(少し違う)。むう。これが俺の研究生活最初の8ヶ月の実態というわけだ。

2002/12/04/Wed.

ここ 3ヶ月、月末の楽しみはと言えば、文庫化が進んでいる『ゴルゴ13』の新刊をゲットすることだ。

俺は 300冊以上の蔵書を有する手塚治虫マニアの端くれだが、手塚の次に好きな漫画はゴルゴ13 である。一昔前、古本屋でゴルゴ13 を漁り買いしていたが、下宿に引っ越すときに全て売り払ってしまった。そのゴルゴ13 が文庫になって刊行され始めた。しかも発表順にもれなく、だ。しかも解説付き。これは嬉しい。

3ヶ月前に 5巻までが発売され、それから毎月 2巻ずつ発行されている。ところが、刊行される分の最後の話が毎回毎回、

「XXXX(前編)」

というやつなのだ。前編かよ、おい。続きはまた来月? かーっ、読みてえ! というわけで月末が近付くと、そわそわとコンビニの本棚を物色してしまう。ちなみに今回の最後の話は「Voo Doo(前編)」というものだったのだが、ゴルゴがヴードゥー教の黒魔術師と対決する話なのだ。しかもゴルゴ、呪いをかけられ体調に異変が。勿論、ゴルゴ13 はリアルな話なので、何かしらタネがあるはずなのだが。ああ、気になる。

2002/12/03/Tue.

今日のタイトルは A氏から頂戴しました。ごっつぁんです。

実験の合間に「Yahoo! News」を見ていたら面白い記事を発見した。見出しは、

<お巡りさん>高架から自殺図った男性をキャッチし救助

記事の内容はというと、「鉄道の高架の上に人がいる」という通報で近くの交番の巡査が駆けつけたら、なるほど確かに男がいる。巡査が何をしているのかと問いかけると、男がやにわに飛び降りてきたのでキャッチして助けたという事件である。この事件で何が凄いかというと、この巡査、その名も、

神智人巡査 (26)

という。かよ。まいったな。詳しく記事を読むと、がキャッチしたのは、8 m の高さから飛び降りた体重70kgの男性。まじかよ。さすが。よく無事だったと思うが、は柔道初段で体重 100 kg の巨体。さすが。キャッチの状況も仰天だ。記事を引用してみよう。

神巡査は 1人で約 100 m 離れた現場に駆け付けた。男性に「何をしているんだ」と叫んだところ、大の字になって飛び降りてきた。神巡査は「とっさに体が動いて男性を受け止めた」という。

人が 8 m を落下するのにどれくらいの時間がかかるか知らないが、それにしても、100 m を走りきるには短すぎるのではないか。しかし、彼はやってのけた。さすが。事件の後、は謙虚に語る。

「初めての事案なので、自分が取った行動が今でも信じられない。相手が無事であればいいんです。何ごとにも対応できる一人前の警察官になりたい」

さすが。でも、この記事は最後に余計な事柄を付け足している。

神巡査は童顔に笑みを浮かべていた。

童顔かよ、

2002/12/02/Mon.

最近「ガイアの夜明け」というテレビ番組にハマっている。日経がスポンサーで、毎週日曜日の夜に、主に日本の企業を取材し、その中の誰かにスポットを当てて経済の現状をレポートするという趣旨だ。これが結構アツい。先週は、リコール隠しが問題になった三菱自動車の再生の話。今週は、近くて遠い国・韓国との経済交流である。

韓国で一番大きな自動車メーカーで「ヒュンダイ」という会社があり、実は世界で第8位の出荷台数を誇るのだが、日本ではまだ知名度が低い。このメーカーの軽自動車を日本で売っていこうとするディーラーの話しが一つ。

もう一つは、逆に日本のメーカーが韓国で商売しようとする話。それは「資生堂」なのだが、なんと資生堂は、韓国ではオバハンがつける化粧のメーカーという印象が強いらしい。この印象を拭って、若者ブランドというイメージを展開しようとする韓国資生堂社長が悪戦苦闘する。

どちらもよい話だ。「ガイアの夜明け」には、日本から絶えて久しくなると言われるがいっぱいでてくるような感じだ。かっこええなあ、働く人は。俺も働きてえ。日曜の夜という放映時間もまたよろしい。明日の月曜から 1週間、また頑張るかという気持ちにさせてくれるのだ。少し見え透いてはいるが。