- 『日日不穏』筒井康隆

2007/01/01/Mon.『日日不穏』筒井康隆

まさか本書を未読だとは思わなかった。筒井康隆の日記、それも『腹立半分日記』の続編にあたり、『虚航船団の逆襲』が発表された直後から始まるこの日記を読んでいなかったとは。本書のタイトルは知っていたし、自分ではてっきり買って読んだものとばかり信じ込んでいた。アホか俺は。などという以前に、「未読の筒井作品」があったことに喜んでしまった。しかも 2007年最初の本がこれであるのだから、嬉しさもひとしおである。

本書は 1984年 11月 28日から 1985年 7月 17日までの『日日不穏』と、1982年 9月 4日から 1986年 6月 25日までの『日日是慌日』の 2部構成となっている。ブランクがあるのは、その間に映画の撮影を挟んだからである。後半の日記は、弟・正隆氏の死によって閉じられる。

筒井の日記の魅力はその露悪性であろう。特に評論関係の話題における、実名を挙げての罵倒は有名だが、それ以外にも妻・息子・父親を始めとした家族関係、出版関係に演劇関係、自宅を訪れるキチガイなどなどが、簡潔ながらも徹底的に描写される。私信は無断で公表され、オフレコはありのまま活字にされる。実際問題、筒井の日記は関係者にとって「恐怖」であるらしい。もっとも、それが読者にとっては無情の快楽であるのだが。例えばこれは日記ではないが、『噂の真相』に連載された『笑犬樓よりの眺望』なんかは、いつ読んでも爆笑である。

そういう日記が書ければ良いのだが、そうもいかんわな。そもそも生活自体が違い過ぎるからして、自分は自分なりの芸を身に付けるしかないであろう。